この記事の登場人物

AIくんなんでも調べる相棒(私)。事実と出典を、静かに並べます。
とぐち(渡久地)見た目は子ども、中身は沖縄のWeb屋の40代(僕)。「つまりどういうこと?」を現場目線で聞きます。
この記事の要点
  • 沖縄県の最低賃金が、時間額1,086円に決まりました。発効は2026年12月2日(水)です。
  • 上がるのは1,086円未満だった人だけ。上がる額は「1,086円 − いまの時給」で、全員が63円ではありません。
  • いま1,030円の人なら56円。月80時間なら、月4,480円です(筆者の計算)。
  • いまの額は1,023円なので、すでに1,023円を下回っている人は、12月2日を待つ前の話になります。

この記事が扱うのは、時給で働いている人と、時給で払っている人です。月給や日給、歩合の人は、時間額に換算してから比べることになります。その換算はこの記事では扱いません。

先に、全体を

1,086円、決まったね。

決まりました。いまの1,023円から63円上がって1,086円。発効は12月2日(水)です。

まだ変わる余地は?

ありません。沖縄労働局長の決定も、官報の公示も済んでいます。額も日付も固まりました。

じゃあ12月2日から、県内で1,086円未満は無しになる。

そうです。パートもアルバイトも契約社員も同じです。

働いている人は、63円上がる。これでいい?

63円上がるのは、いまちょうど1,023円の人だけです。式は「1,086円 − いまの時給」。

1,030円の人は。

56円です。1,060円なら26円。1,086円以上の人は、この改正では上がりません。

月だといくら増えるの。

上がった額に、自分がひと月に働く時間を掛けます。56円で月80時間なら月4,480円。年で5万3,760円。

掛け算は自分の時間でやるんだ。

雇っている側。6人いて全員に63円ずつ上げたら、月いくら増える?

その数え方だと合いません。上げる義務があるのは1,086円未満の人だけで、額もひとりずつ違います。

じゃあ1,000円が1人、1,023円が2人、1,050円が1人、1,080円が1人、1,100円が1人。

上げ幅は86円、63円が2人、36円、6円、1,100円の人は0円。全員が月80時間なら、合わせて月2万320円です。

6人×63円×80時間なら3万240円。1万円ちがうな。

人数で数えると、だいたい多く見積もります。使うのは「ひとりの差額 × その人の時間」の合計です。

最初の1,000円、いまの1,023円より低いけど。

それは12月2日を待つ話ではありません。いまの額を下回っています。

通勤手当を入れて1,100円なら、1,086円は超えてるよね。

超えていません。比べるのは時給の1,050円です。

手取りが足りていても関係ない、ということ。

関係ないです。見るのは時給の数字ひとつ。足していいものと、外すものが決まっています。

給与明細の合計を見ても判断できないんだ。

できません。時給の欄を見てください。

何が決まったか

令和8年度の沖縄県最低賃金は、時間額1,086円。引上げ額は63円、引上率は6.16%です。発効は2026年12月2日(水)。

手続きは3段階ありました。9月3日に沖縄地方最低賃金審議会が沖縄労働局長へ答申し、9月24日に労働局長が改正を決定。10月5日に官報公示が行われています(沖縄労働局の発表資料・PDF)。

ここ数年の推移も置いておきます。令和6年度が952円、令和7年度が1,023円、そして令和8年度が1,086円。上げ幅は56円、71円、63円と来ています。

時給で働いている人へ

12月2日以降、沖縄県内で働く人の時給は1,086円以上でなければなりません。正社員だけでなく、パート・アルバイト・契約社員も同じです。派遣で働く人には、派遣先の都道府県の額が適用されます(最低賃金法第13条)。

自分がいくら上がるかは、人によって違います。式は「1,086円 − いまの時給」。いま1,023円ちょうどの人は63円、1,030円なら56円、1,060円なら26円です。1,086円以上の人は、この改正では上がりません。

月でいくら増えるかは、その額に自分のひと月の労働時間を掛けます。56円の人が月80時間なら、月4,480円。年なら5万3,760円です(筆者の計算)。年収が増えることで社会保険や扶養の扱いが変わるかどうかは、この記事では扱いません。

12月の給与明細を見るときの注意です。1,086円になるかどうかを決めるのは、働いた日です。締め日でも支払日でもありません。12月2日以降に働いた時間が1,086円未満なら、足りていません。

下回る額で働かされた場合、その部分の契約は無効になり、最低賃金額で契約したものとみなされます(最低賃金法第4条第2項)。差額を請求できます。聞き先は記事の終わりに置きました。

時給で払っている人へ

上げ幅は「1,086円 − いまの時給」。増える金額は、ひとりの差額に、その人のひと月の労働時間を掛けた合計です。人数に63円を掛ける計算では出ません。

いまの時給円 上げ幅円 月80時間円 年額月80時間×12
1,000 86 6,880 82,560
1,023 63 5,040 60,480
1,050 36 2,880 34,560
1,080 6 480 5,760
1,086以上 0 0 0

(筆者の計算。月80時間の人の例です。時間が違う人は、上げ幅に自分の時間を掛けてください。賃金の額だけで、社会保険料や雇用保険料の会社負担は含みません)

表のいちばん上の1,000円には、注意が要ります。いまの沖縄県最低賃金は1,023円なので、この額はすでに下回っています。12月2日に向けて直す話ではなく、いまの時点で足りていません。どう直すかはこの記事では扱いません。聞き先は記事の終わりにあります。

最低賃金と比べる賃金、比べない賃金

比べるのは、時給そのものです。時給1,050円の人に通勤手当を足して1,100円になっても、比べるのは1,050円のほうです。

最低賃金法第4条第3項が「算入しない」賃金を定めていて、厚生労働省の最低賃金特設サイトはそれを6つに整理しています。

①臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
②1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
③所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
④所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
⑤午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
⑥精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

③と④は、その労働に対して支払われる賃金が丸ごと外れます。⑤の深夜だけは、通常の時間の賃金を超える部分(割増のぶん)が外れます。

⑤で誤解しやすいところを分けておきます。深夜の割増は、最低賃金と比べるときに外すという話です。深夜の割増として払う額のほうは、時給が上がれば上がります。外れるのと上がるのは、別のことを言っています。

月末締めで払っている人へ:12月分の切り分け

月末締めなら、12月分の給与は12月1日までと12月2日以降が混ざります。厚生労働省の最低賃金特設サイトに、この問答がありました。

賃金算定期間の途中に発効日がある場合であっても、発効日以降は改定後の最低賃金額以上の賃金を支払う必要がありますので、ご注意ください。

(厚生労働省・最低賃金特設サイト よくあるご質問)

来月から上げればいい、という話ではなく、12月2日以降の労働時間には1,086円以上が要ります。月末締めの場合、旧額のまま計算できるのは12月1日(火)の1日だけです。

切り分けを避ける手もあります。最低賃金法が定めているのは下限で、上回る額を払うことを禁じる規定はありません。12月1日分も1,086円で計算し、12月分を丸ごと新しい額で払っても、最低賃金法上は問題ありません。時給1,050円の人が12月1日に4時間入っていたとしても、多く払うのは144円です。設定が1回で済むので、小さな事業所ならこちらが楽だと思います(筆者の判断です)。

円未満の端数については、通達で扱いが示されています。1時間当たりの賃金額と割増賃金額の円未満の端数は、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げてよい。1か月の割増賃金の総額の1円未満の端数も同じ。ただし日ごとに端数処理することはできません(昭和63年3月14日付け基発150号。山口労働局の資料・PDF)。

残業と深夜、法定休日の割増

割増の基礎になるのが、いま上げようとしているこの時給です。割増率は時間外が25%以上、深夜が25%以上、法定休日が35%以上と定められています(労働基準法第37条。厚生労働省・確かめよう労働条件)。

時給1,050円の人を法定どおりの率で計算すると、1時間あたりの差はこうなります(筆者の計算)。

1時間あたり いま円 12月2日以降円 差円
ふつうの時間 1,050 1,086 36
残業(1.25倍) 1,312.50 1,357.50 45
深夜(1.25倍) 1,312.50 1,357.50 45
法定休日(1.35倍) 1,417.50 1,466.10 48.60
残業かつ深夜(1.5倍) 1,575 1,629 54

残業が1時間でもあれば、通常時間だけで出した額では足りません。

設備投資の予定がある会社へ:業務改善助成金

賃上げと設備投資をセットでやる会社向けに、国の業務改善助成金があります。申請期間は厚生労働省のページにこう書かれています。

申請期間は令和8年9月1日~申請事業場の都道府県において適用される地域別最低賃金の発効日の前日又は同年11月30日のいずれか早い日となります。

沖縄の発効日の前日は12月1日なので、早いほうは11月30日。発効日より前に締切が来ます。

同じページに、もうひとつ大事な一文があります。

事業場内最低賃金の引上げや設備投資等は、これから実施するものが助成の対象となります。

先に賃上げや設備の購入を済ませてから申請する、という順番では対象になりません。賃金そのものを補填する制度でもなく、要件は引上げ額や事業規模など複数あります。この記事では適用できるかどうかの判定はしません。上のページを読むか、業務改善助成金コールセンター 0120-366-440(平日9時〜17時)へ。

どこに聞くか

決まった額や制度そのものについては、沖縄労働局 労働基準部 賃金室(098-868-3421)。10月5日の発表資料に、問い合わせ先の電話番号として載っている番号です。

自分の賃金が足りているか、足りていないときどうするかは、別の窓口です。厚生労働省の最低賃金特設サイトは「各都道府県労働局、または最寄りの労働基準監督署へ」と案内しています。那覇労働基準監督署なら、労働条件、解雇、賃金を扱う「方面」が098-868-8033、総合労働相談コーナーが098-868-8008。受付は月曜から金曜の8時30分〜17時15分です。働いている本人がかけてよい窓口です。監督署は地域で分かれているので、勤務先の管轄は沖縄労働局の一覧で確認してください。

月末締めの12月分を日で分けたい場合は、こう聞けば通じます。「月末締めです。12月分のうち、12月1日と12月2日以降の計算をどう分ければいいですか」

まとめ

  • 沖縄県の最低賃金は1,086円に決まった。63円増、引上率6.16%。発効は2026年12月2日(水)
  • 9月3日に答申、9月24日に沖縄労働局長が決定、10月5日に官報公示。手続きは済んでいる
  • 上がる額は「1,086円 − いまの時給」。いま1,086円以上の人は上がらない
  • 月額は、上げ幅にその人のひと月の労働時間を掛ける。人数に63円を掛ける計算では出ない
  • すでに1,023円を下回っている場合は、12月2日より前の問題
  • 働く人は、12月2日以降に働いた時間が1,086円を下回っていれば差額を請求できる
  • 残業と深夜、法定休日の割増も、同じ日から上がる
  • 月末締めなら、旧額のままでいいのは12月1日(火)の1日だけ
  • 設備投資の予定があるなら、業務改善助成金の締切が11月30日。賃上げや購入を済ませる前に申請する

12月2日から、沖縄県内の時給の下限は1,086円です。働く人は自分の時給の欄を、払う人はひとりずつの差額を見てください。

※本記事は2026年10月16日時点の公開情報にもとづきます。金額・発効日・手続きの日付と引上率6.16%は、沖縄労働局の10月5日の発表資料によります。時給別の表の数字、月額・年額、割増賃金の額は、筆者が公表数値やルールから計算したものです。割増賃金は法定の下限(時間外25%以上など)で計算しており、これを上回る率を定めている場合は額が変わります。1か月に60時間を超える時間外の割増率は50%以上です。この記事が扱うのは時給で働く人・時給で払う人の賃金の額だけで、月給・日給・歩合の換算、社会保険料や労働保険料の負担、年収や扶養の扱いは含みません。
確認できなかったことが1件あります。沖縄の12月2日が全国でいちばん遅い発効日かどうかは、確かめきれませんでした。手元で突き合わせられたのは答申の時点の「発効予定年月日」の一覧までで、47都道府県すべての公示後の確定日を並べた資料には当たれていません。
なお、最低賃金法の「労働者」からは、同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される人と家事使用人が除かれています(同法第2条第1号)。また同法第7条は、使用者が都道府県労働局長の許可を受けた場合に限り、一定の労働者について最低賃金額から一定の率を減額した額を適用できると定めています。同条が挙げているのは、精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者、試の使用期間中の者、認定職業訓練を受ける者のうち厚生労働省令で定めるもの、軽易な業務に従事する者その他の厚生労働省令で定める者、の4号です。
筆者は沖縄の個人事業主で、人を雇っておらず、雇われてもいません。実務の経験ではなく、公的資料で確認できた範囲で書いています。