この記事の登場人物
- 琉球ゴールデンキングスの売上高は35億6,687万3千円(2024-25シーズン)。B1(1部・24クラブ)で3位、8年で4.4倍です。決算は例年10月ごろの公表で、2025-26シーズン分は本記事の確認範囲では未公表でした。
- 稼ぎ方がリーグの中で異質でした。売上に占める割合はスポンサー30.8%・入場料37.7%。B1平均はスポンサー49.1%・入場料24.0%なので、ほぼ逆の形です(比率は公表金額をもとにした筆者の計算です)。
- 稼いだお金は使い切っています。営業費用は売上の87.1%。うち人件費と試合関連経費で56.9%。それでも当期純利益は3億2,668万4千円の黒字でした。
- パートナー企業は3年で393社から982社へ。2.5倍です。
- アリーナの総事業費は約162億3,000万円とされています。財源の9割は国と県のお金で、最大の柱は米軍再編に伴う防衛省の補助金でした。市の負担は市債10億円程度が中心です。
- 市が払うはずの指定管理料は、受け取られていない期間があります。ただし範囲の書き方が資料によって違い、本記事では確定できませんでした。
- 建設前の経済効果試算は県全体で471億〜580億円。ただしその後、効果を検証した資料は見つけられませんでした。
2023年5月28日、僕は横浜アリーナにいたんだよ。
琉球ゴールデンキングスが千葉ジェッツを下して、B1初優勝を決めた日ですね。
沖縄からわざわざ見に行ってね。第1戦が2度の延長の末に96-93、第2戦が88-73。連勝で決まった。あの日のことは、たぶんずっと覚えてると思う。
それから3年3か月。新リーグの開幕まで、あと1か月あまりです。
うん。だから今日は、応援の話じゃなくて、お金の話をゆっくりしてみたくてね。キングスはいくら稼いでいるのか。何に使っているのか。あのアリーナに、いくら税金が入っているのか。
先にひとつ確認を。書き手がキングスのファンであることは、記事に書きますか。
書いておこうかな。隠してもしょうがないしね。……それにたぶん、黙ってたほうが数字が甘くなる。そっちのほうが嫌だな。
分かりました。では、そのつもりで止めます。
うん、遠慮なくお願いします。
まず、キングスはいくら稼いでいるのか
Bリーグは全クラブの決算を毎年公表しています。
2024-25シーズンの売上高(営業収入)は35億6,687万3千円。B1全24クラブ中3位でした(B.LEAGUE クラブ決算開示(2024-25/PDF))。1位は千葉ジェッツの51.7億円、2位はアルバルク東京の36.3億円です。
推移を並べます。
- 2016-17:8億1,051万5千円
- 2018-19:11億1,706万1千円
- 2020-21:12億7,698万5千円
- 2021-22:19億7,357万8千円(沖縄アリーナ初年度)
- 2022-23:23億7,597万8千円
- 2023-24:30億5,802万9千円
- 2024-25:35億6,687万3千円
Bリーグ初年度の2016-17から、8シーズンで4.4倍。B1の24クラブ平均は約21億9,000万円なので、平均の1.6倍にあたります。
35億円かあ。正直、ピンとこないなあ。
沖縄市の令和8年度(2026年度)一般会計予算が876億4,200万円なので、その4.1%にあたります。ただし企業の売上と自治体の歳出は性質の違う数字なので、規模感の目安として見てください。
へえ。人口14万人の市で、その規模なんだ。
※2025-26シーズンの決算は、2026年8月19日時点で公表が見当たりませんでした。Bリーグの公表は例年10月ごろなので、この記事の数字は1シーズン前のものです。
稼ぎ方が、リーグの中で異質だった
調べていて驚いた部分です。売上の中身を見ると、キングスは他のクラブとかなり違う形をしていました。
- スポンサー収入 11億23万3千円 = 売上の30.8%(B1平均49.1%)
- 入場料収入 13億4,401万7千円 = 売上の37.7%(B1平均24.0%)
- 物販収入 4億9,745万2千円 = 売上の13.9%(B1平均8.0%)
比率がほぼ逆です。B1平均で見ると企業からのスポンサー料が収入の柱ですが、キングスはチケットとグッズで稼いでいます。
金額で見ても、入場料はB1で2位、物販は3位。一方でスポンサー収入は7位です。
これって、いいことなの? 悪いことなの?
どちらとも言えます。スポンサーは景気や1社の判断で急に減ることがあるので、依存度が低いのは強みです。一方でチケット収入は、席が埋まらなければ落ちます。
なるほどねえ。入場料と物販で5割強か。お客さんが来続けることが前提の商売になってるんだ。
客足の影響は、他クラブより大きく出やすい構造だとは言えます。
売上は3位なのに、スポンサーだけ7位っていうのも、ちょっと気になるなあ。
そこは次の章で見ます。企業の数だけなら、3年で2.5倍に増えています。
※比率はB.LEAGUE公表の各クラブ数値をもとに筆者が計算しました。リーグが公表している指標ではありません。
パートナー企業は3年で2.5倍。982社という数字
クラブが毎年公表している実績報告に、パートナー企業数が載っています。並べてみて、しばらく画面を見つめてしまいました。
- 2022-23シーズン:393社
- 2023-24シーズン:710社(+317社)
- 2024-25シーズン:888社(+178社)
- 2025-26シーズン:982社(+94社)
3年で589社増えて、2.5倍です(第18期実績報告/第19期実績報告/2025-26シーズン実績)。2022-23の393社は、第18期報告の「710社(昨年比317社増)」から逆算しました。
589社かあ。どれくらいのペースなんだろう。
単純に割ると1年で約196社。月に16社ずつ増えている計算になります。
月に16社。……土日は試合だから、平日だけで考えたら週に4社くらい?
新規だけの数ではなく、継続分も含めた総数の増加です。契約を取って、更新してもらって、それで増えている。
いや、これはすごいよ。相手の多くは沖縄の会社でしょ。上場企業がぽんと出す金額じゃなくて、地元の会社が1社ずつ手を挙げてくれてるってことだよね。
そこは慎重に見たほうがいいところです。2024-25のスポンサー収入11億23万3千円を、同じシーズンの888社で割ると1社あたり約124万円になりますが、これは平均です。
あ、そうか。平均ってことは、大口が何社かあっても成立するのか。
そうです。分布は、筆者が確認した範囲では公表されていません。しかも分子は決算のスポンサー収入、分母は実績報告のパートナー企業数で、出所も定義も違います。物品協賛やメディアパートナーが含まれるかも、公表資料からは分かりません。
……うん。じゃあ「小口をたくさん集めている」とまでは言えないんだね。
言い切れません。この記事で確かに言えるのは2つだけです。企業数が3年で2.5倍に増えたこと。それでもスポンサー収入は売上の3割にとどまっていること。
なるほどねえ。数として増えているのは確か、と。
そこは確かです。他クラブの企業数と比べた資料は、筆者は見つけられませんでした。
それでも、平均124万円という数字を、僕はずいぶん長く噛みしめていました。
ここから先は筆者の受け取り方です。1社に何億円も出してもらう商売ではなく、県内の会社に1社ずつ会って、説明して、納得してもらって、翌年もまた続けてもらう。それを888社ぶん積み上げた結果が、2024-25シーズンの11億円だった。そう読める数字だと思っています。
同じ実績報告に、地域交流活動の回数も載っています。2023-24が205回、2024-25が273回、そして2025-26が331回。単純に割れば、1日1回に近いペースです。
これって、選手の練習と試合とは別に、これだけ動いてるってことだよね。
学校訪問やクリニック、イベントなどが含まれます。数え方はクラブの基準によります。パートナー企業数と地域交流の回数は同じ期間にどちらも増えていますが、どちらかがどちらかの原因かは公表資料からは分かりません。クラブの規模が大きくなれば両方増えるので、それだけの話かもしれません。
そっか。因果だと思いたくなるけど、そこは資料にないんだなあ。
稼いだお金を、どこに使っているか
営業費用は31億748万7千円。売上に対して87.1%にあたります。
内訳のうち大きいのはトップチーム人件費10億8,332万5千円、試合関連経費9億4,753万3千円。この2つで20億3,085万8千円、売上の56.9%です。
稼いだお金の半分以上が、チームと試合そのものに戻ってるってこと?
数字の上ではそう読めます。人件費が売上の約30%。ただ、営業費用率87.1%という数字自体は、良し悪しの評価とは切り離して見てください。使い切る経営は、外部環境が悪化したときの余裕が小さいという読み方もできます。
それはそうだね。……でも僕は、稼いだぶんがチームと試合に回っていく形が好きだなあ。
試合関連経費には、演出・運営・設営などが含まれます。
会場に入った瞬間のあの感じ、あれタダじゃないんだね。
ちなみに「トップチーム」という書き方は、育成年代のチームなどと区別するための表記です。選手とヘッドコーチの報酬が中心になります。
へえ、そういう区別なんだ。
それでいて、当期純利益は3億2,668万4千円の黒字でした。使うところに使って、そのうえで残している。健全な形に見えます。ただし自己資本や有利子負債までは確認していないので、単年度の損益だけを見た印象です。
※金額はいずれもB.LEAGUEの2024-25シーズン クラブ決算開示(PDF)の数値で、売上から営業利益4億5,938万6千円を引くと営業費用に一致することを検算しています。比率は筆者の計算です。
アリーナが来て、何が変わったか
沖縄アリーナ(現・沖縄サントリーアリーナ。名前が変わった理由は後半の命名権のところで書きます)が開業したのは2021年です。それ以前のホームは沖縄市体育館で、市関連団体の施設案内には約2,123人収容と記載されています。
- 売上高:12億7,698万5千円(2020-21)→ 19億7,357万8千円(2021-22)。1年で54.5%増
- 入場料収入:3億2,192万円 → 7億7,956万円。2.4倍
- 平均入場者数:8,322人(2025-26。B1で4位)
ただし、この伸びをそのまま移転の効果とは読めません。起点の2020-21シーズンは入場制限下でした。どこまでが移転の効果で、どこまでが制限緩和による回復かは、公表資料からは切り分けられません。旧ホームは2,000人規模だったので、移転前の入場者数は箱の大きさで頭打ちだった可能性もあります。
1人あたりが落とす金額も変わりました。入場料と物販を、それぞれのシーズンの入場者数で割ります。
- 2016-17:入場料 約2,296円+物販 約590円 = 約2,886円
- 2024-25:入場料 約4,073円+物販 約1,507円 = 約5,580円
およそ1.9倍。ただしこれは8年分の名目値で、チケット価格の改定分と物価上昇分を含みます。
※この客単価は筆者の試算です。入場料収入や物販収入はリーグ戦以外も含む決算値である一方、入場者数の集計範囲は資料によって異なります。傾向を見るための概算としてお読みください。平均入場者数8,322人は2025-26シーズン、売上構成比は2024-25シーズンの数字で、年度が異なります。
では、そのアリーナに税金はいくら使われたのか
沖縄アリーナの総事業費は約162億3,000万円。2020年8月6日の市議会臨時会で契約変更が全会一致で可決され、約2億8,000万円の増額でこの額になりました(琉球新報 2020年8月7日)。増額の理由は、廃棄物混じり土の処分と台風による資材輸送の遅れと報じられています。スポーツ庁の会議資料も同額を記載しています(沖縄市作成「沖縄アリーナ 全体概要」/PDF)。
財源の内訳は、沖縄市の予算書に載っていました。平成31年度(2019年度)予算に関する説明書の債務負担行為調書、「多目的アリーナ整備事業」(平成30〜32年度=2018〜2020年度)の限度額134億6,944万1千円について、こう書かれています(沖縄市 平成31年度予算に関する説明書/PDF)。
- 国・県(国県支出金):121億2,249万5千円(90.0%)
- 地方債(市債):10億1,020万円(7.5%)
- その他:3億3,600万円(2.5%)
- 一般財源:74万6千円(0.006%)
ごめん、「債務負担行為調書」と「限度額」のあたりで、もう分からなくなってきた。
債務負担行為は、複数年にわたって支払う約束を、あらかじめ議会の議決を取っておく仕組みです。調書はその一覧表。限度額は「ここまでなら払う」という上限で、実際に払った確定額ではありません。
ああ、じゃあこの134億円は、確定した支出じゃないんだ。
そうです。しかも総事業費162億円のうちの134億円分なので、全体の内訳とも範囲が一致しません。それでも、9割が国と県で市の借金は10億円程度、という骨格は読めます。
一般財源74万6千円っていうのは、どういうお金?
市が自由に使えるお金からの持ち出しです。0.006%なので、この調書の範囲ではほぼゼロと言っていい。ただし市債10億円の返済は市の一般会計から出るので、市の負担がゼロという意味ではありません。
ふうん。……そこ、混同しやすいところだね。
もうひとつ。この表の見出しは「国庫補助金」ではなく「国・県」です。国から直接入るお金と、県を経由して入るお金の両方が含まれています。この書き分けは、次の章で効いてきます。
そのお金は、どこから来たのか
沖縄市は公式ページで、工程ごとに「活用補助金」を書き分けています(沖縄市 沖縄アリーナ竣工)。
- 平成28年6月 全体計画策定:特定防衛施設周辺整備調整交付金(9条)
- 平成29年12月 解体工事着手:再編推進事業補助金
- 平成30年3月 実施設計策定:特定防衛施設周辺整備調整交付金(9条)
- 平成30年8月 工事着手:再編推進事業補助金/沖縄振興特定事業推進費補助金/沖縄振興特別推進交付金
- 令和3年2月 竣工:再編推進事業補助金/沖縄振興特定事業推進費補助金/沖縄振興特別推進交付金
制度の名前が多くて、ちょっと目が滑るなあ。
大きく2系統です。防衛省のお金と、内閣府のお金。
防衛省が2つあるの?
「再編推進事業補助金」と「特定防衛施設周辺整備調整交付金(9条)」、それに予算書で「8条」と書かれているものがあります。9条も8条も、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律の条番号です。基地があることに伴う自治体側の負担に対して出るお金、という点は共通しています。
内閣府のほうは?
「沖縄振興特定事業推進費補助金」と「沖縄振興特別推進交付金」の2つ。後者がいわゆる一括交付金です。
で、金額がいちばん大きいのはどれなんだろう。
防衛省の再編推進事業補助金です。米軍再編に伴う負担に対して交付される制度で、補助率9割。ここだけ押さえれば、あとは組み合わせの話です。
補助率9割って、事業費の9割を国が出してくれるってこと?
対象になる事業費のうち、という条件付きです。ここが後で効いてきます。
金額まで確認できたものを、出所ごとに分けて並べます。混ぜると数字の意味が変わるためです。
市の予算書に計上されていた額
- 再編推進事業補助金(防衛省・補助率9/10):平成31年度当初 87億1,688万8千円、令和2年度当初 21億7,393万5千円
- 沖縄振興特定事業推進費補助金(内閣府・補助率4/5):令和2年度当初 23億5,389万円
- 沖縄アリーナ整備事業(8条)(防衛省・補助率2/3):令和2年度当初 7億3,831万2千円
- 沖縄アリーナ推進事業(沖縄振興交付金・補助率4/5):令和3年度 1億599万6千円(県支出金)
内閣府が交付を決定した額
- 沖縄振興特定事業推進費:令和元年度 21億6,200万円、令和2年度 19億3,600万円
出典は、令和2年度と令和3年度の沖縄市一般会計予算に関する説明書、および内閣府の交付決定資料(令和元年度/令和2年度)です。
これ、足したら162億になるの?
なりません。市の予算書ベースの5項目を単純に足すと約140億9,000万円ですが、これは筆者の合計であって、公表された内訳ではありません。
ええと……21億円くらい足りないね。
理由は3つ考えられます。平成29年度以前の解体工事や実施設計の分がこの一覧に入っていないこと。当初予算の額なので、補正で動いた分が反映されていないこと。それに、内閣府の交付決定額と市の予算計上額は同じお金の別の段階を指すので、足し合わせられないこと。
そうか。つまり、公開資料だけでは内訳を最後まで埋められないんだ。
埋められませんでした。そこは正直に書くべきところだと思います。
うん。じゃあ、埋まらなかったって書こう。そのほうが正直だしね。
もうひとつ、混同されやすい点を。沖縄振興特別推進交付金(いわゆる一括交付金)も、この事業に使われています。市の公式ページが工事着手と竣工の両工程で挙げており、令和3年度予算には県支出金として1億599万6千円が計上されています。前の章で触れた「国・県」という列の書き分けは、ここに関わります。ただし市が公表している一括交付金の事業検証シートを筆者が確認した範囲では、アリーナ整備事業は見当たりませんでした。理由は特定できていません。
さて、補助率9割の再編推進事業補助金について、琉球新報は2018年11月の時点でこう報じています。この補助金は用途が公共用施設の整備に限られるため、事業費に占める補助の割合は6割程度にとどまっていた。そこで内閣府の一括交付金と組み合わせて、9割を目指す方針だった(琉球新報 2018年11月5日)。制度の補助率が9割でも、事業費全体でみると6割にしかならない。だから複数の制度を重ねる必要があった、という話です。この時点の総事業費は146億8,000万円と報じられており、最終の162億3,000万円まで計画は動き続けています。
この組み合わせは、国会の調査資料でも取り上げられています。参議院の『立法と調査』2020年6月号(藤生将治「沖縄振興特定事業推進費をめぐる動向と論点」)は脚注で、観覧機能の部分について「沖縄市が当初予算提出時に見込んでいた財源を確保できないことが明らかになり」迅速に財源を捻出する必要が生じたため推進費の対象にした、という内閣府の説明を紹介しています。あわせて、この推進費が「その交付は沖縄県を介さず、国が直接行うものとされている」点への指摘にも触れています(参議院『立法と調査』2020年6月 No.424/PDF)。
同じ資料によれば、沖縄振興特定事業推進費の令和元年度予算は30億円。そのうち21億6,200万円が、アリーナ1件に交付されています。制度全体の7割強です。
この記事は、どちらの立場も採りません。市の側から見れば、使える制度を組み合わせて負担を最小化した形です。一方で、県を介さない直轄の補助が特定の事業に集中することへの疑問や、基地の負担と引き換えの財源に頼る構図への批判があり、それが国会の調査資料に載るところまで来ています。事実として、両方の見方が公的な資料の上に載っている、と書いておきます。
建てたあとの話。指定管理料が受け取られていない
沖縄アリーナの指定管理者、つまり市から施設の管理運営を任されている会社は、沖縄アリーナ株式会社です。キングスを運営する沖縄バスケットボール株式会社のグループ会社にあたります(沖縄市 指定管理者制度)。指定期間は第1期が2019年10月から2025年3月、第2期が2025年4月から2030年3月です。
市は令和6〜11年度(2024〜2029年度)の債務負担行為として、指定管理者委託料の限度額3億2,000万円を設定しています(沖縄市 令和6年度一般会計予算/PDF)。指定期間5年で割ると年6,400万円相当ですが、これは筆者の計算で、市が年額として公表した数字ではありません。
そのうえで、こういう報道があります。琉球新報は2024年3月、沖縄アリーナ株式会社が2022年度の一部と23年度分の計6,400万円を、経営好調を理由に受け取っていないと報じました(琉球新報 2024年3月6日)。
※前の段落の「年6,400万円相当」と、この「計6,400万円」は、たまたま同じ額が並んだ別の数字です。前者は第2期の枠を5で割った筆者の計算、後者は第1期のうち2年分の辞退額です。
ちょっと待って。もらえるお金を、いらないって言ったってこと?
そう読める報道です。ただ、範囲は資料によって書き方が違います。会社側は第1期について、自治体からの指定管理料を受け取ることなく独立採算による経営を実現した、と発表しています。
報道は「22年度の一部と23年度分」で、会社は「第1期を通じて」。……ずれてる?
ずれています。第1期の初期に支払いがあったのかどうかは、市の各年度決算に当たらないと確定できません。筆者はそこまで確認できていません。
じゃあ、確定しているのは何になるんだろう。
少なくとも2022年度の一部以降について、受け取られていない期間があること。金額は計6,400万円と報じられていること。この2つです。
それでも、契約上は受け取っていいお金だよね。誰も責めないと思うよ。
ただ、ここは条件を付けて読む必要があります。
うん、分かってる。あの会社、キングスのグループ会社だもんね。
そこも書いておきます。施設で行われるキングスの興行や、それに伴う飲食・物販の収入も、同じグループに入ります。指定管理料を受け取らないことが経営として不利なのか有利なのかは、外からは判断できません。
それでも、契約上受け取れる公金を受け取っていないという事実は残ります。僕はそこに敬意を持っています。ただ、敬意を持つことと、構造を書かずにおくことは、たぶん別の話なんだと思います。
市に残る負担もあります。市債10億1,020万円の元利償還は市の一般会計から出ます。大規模修繕や設備更新、将来の建て替えといった設置者側の負担も、通常は市に残ります。実際の負担額までは、筆者は確認できていません。
お金は逆向きにも動いています。命名権です。沖縄サントリーが2025年2月1日から3年間、年額5,000万円で取得しました。契約したのは沖縄市なので、この5,000万円は市の収入になります(沖縄市 沖縄サントリーアリーナ)。施設の名前が変わったのは、これが理由です。
想定と比べると、どうだったんだろう。
計画段階の運営手法検討調査報告書は、ネーミングライツ等を含む屋内広告収入を年2,700万円と設定していました。その倍近い額がついたことになります。
あれ、「想定の10倍」みたいな話も見た気がするんだけど。
それは同じ報告書が引用している、さらに前の全体計画調査時の想定(年500万円)と比べた数字です。どちらを基準に置くかで、何倍かの答えは変わります。
なるほどねえ。……3年契約なんだね。
はい。更新の保証があるわけではありません。
事前の試算は、検証されていない
沖縄市は建設前に、経済効果を試算していました。県全体への経済波及効果を、ケースAで580億6,300万円、ケースBで471億1,700万円と見込んでいます(沖縄市 多目的アリーナ運営手法等検討調査業務報告書 第3章/PDF)。
ケースAとケースBって、何が違うの?
稼働の想定です。Aが強気、Bが控えめ。運営収支の試算も出ていて、Aは年間プラス1億2,258万円、Bはマイナス3,304万円です。
へえ。控えめに見れば赤字だって、市の側も分かってたんだ。
そう読めます。それと、471億や580億という数字の読み方には注意がいります。
というと?
建設という一度きりの効果(両ケース共通で約251億6,000万円)と、運営が始まったあとの1年分の効果(Aで約328億9,300万円、Bで約219億5,700万円)を足した数字だからです。後者の大半は来場者の消費で、こちらは毎年発生します。
……ああ、性質の違うものを足してるってことか。
はい。だから「総事業費162億円の何倍」という比べ方はできません。ちなみにケースBで沖縄市にもたらされる効果は約31億4,400万円と試算されています。県全体の数字だけを市の負担と並べると、印象が実態から離れます。
実際にどうだったのか。事前の試算が当たったのかどうかを検証した資料を、2026年8月19日時点で沖縄市のウェブサイトを検索した範囲では見つけられませんでした。スポーツ庁の会議資料でも、管理運営費・利用料収入・総収入の3項目が「非公開」とされています。稼働率や経済効果は、そもそも項目として掲載されていません。
いま分かっている範囲では、少なくとも赤字の筋書きどおりにはなっていません。
効果が出ていてもいなくても、162億円を使った以上、その結果は市民が知っていい数字だと思います。だから僕は、検証してほしいと思っています。
もうすぐ始まる新リーグと、沖縄が先に建てていたこと
2026年9月22日、新リーグが開幕します。開幕カードはアルバルク東京戦。2016年のBリーグ初代開幕戦と同じ顔合わせです。ホーム開幕は10月8日、群馬クレインサンダーズ戦(B.LEAGUE/クラブ発表)。
そもそも、なんでリーグを作り直すんだろう。
新リーグの最上位「B.LEAGUE PREMIER」(B.PREMIER)は、成績で上下する仕組みではなく、経営の基準を満たしたクラブが入る形になります。本則は売上高12億円以上、平均入場者数4,000名以上、ホームアリーナ5,000席以上(緩和条件あり)です。
勝ち負けじゃなくて、経営で選ぶんだ。
はい。キングスの数字を当てはめると、売上は基準の約3.0倍、平均入場者数は約2.1倍です。
席数のほうは?
沖縄サントリーアリーナは基準を大きく上回ります。
参入基準はB.LEAGUE 新リーグ規程で公表されています。キングスは2024年10月、最速の1次審査で参入が決まった5クラブのひとつでした。他は宇都宮、千葉ジェッツ、アルバルク東京、川崎です(B.LEAGUE 2024年10月17日)。
以下は筆者の見立てです。
沖縄アリーナが開業したのは2021年で、リーグが5,000席という基準を示したのはそのあとです。いま全国のB.PREMIERクラブのホームを見ると、TOYOTA ARENA TOKYO、IGアリーナ、GLION ARENA KOBEなど、新設・新規開業が並んでいます(B.LEAGUE クラブ一覧)。基準の前後で、新しい箱が次々に立ち上がっている状況です。
2021年にあの箱を作るのは、当時かなりの賭けだったんだろうなあ。控えめに見れば赤字だって、報告書自身が書いてたわけだし。
狙って先回りしたのか、順番がそうなっただけなのかは、公開資料からは分かりません。時間差があったこと自体は事実ですが、それが今どれだけ効いているかを測る数字は、公開資料には見当たりません。
それはそうだね。……ただ、あの箱がなかったら、売上も入場者数も基準に届いてない気がするなあ。
そこは筆者の見立てになります。
うん、見立てとして書くよ。……あとね、これは自分に言い聞かせるんだけど、この優位って永久じゃないよね。
新アリーナが各地に出そろえば、席数と体験価値の差は縮みます。いまの数字が5年後も同じとは限りません。
そこも書いておこう。都合の悪いことも書くって、最初に言ったからね。
まとめ
- キングスの売上高は35億6,687万3千円(2024-25)。B1で3位、Bリーグ初年度から8年で4.4倍
- 稼ぎ方が異質。スポンサー30.8%・入場料37.7%で、B1平均とほぼ逆
- パートナー企業は3年で393社→982社。1社あたり平均約124万円(分布は非公表)
- 営業費用は売上の87.1%。うち人件費と試合関連経費で56.9%。当期純利益は3億2,668万4千円
- アリーナの総事業費は約162億3,000万円。財源の9割が国と県で、最大の柱は米軍再編に伴う防衛省の補助金(評価の分かれる論点)
- 公開資料だけでは、162億円の内訳を最後まで埋められなかった
- 指定管理料は受け取られていない期間がある。命名権料年5,000万円は市の収入。ただし指定管理者はクラブのグループ会社で、市債の償還や修繕費の負担は市に残る
- 事前の経済効果試算は県全体で471億〜580億円。ただし一過性の建設効果と単年度の運営効果の合算で、事後検証は確認できなかった
これから気になっていること
- 2025-26シーズンの決算(10月ごろ公表見込み)。伸びが続くかどうか
- パートナー企業が1,000社を超えるかどうか
- 新アリーナが各地に出そろったあと、入場料で稼ぐキングスの優位がどう変わるか
- 入場料依存のリスク。客単価はすでに1.9倍まで上がっており、値上げの余地は以前より小さい
- 新リーグでの人件費競争。人件費は売上の約30%を占め、固定費に近い支出
- 指定管理料の扱いが第2期(2025年4月〜2030年3月)でどうなるか
- 命名権が3年後に更新されるかどうか
- 市による経済効果の事後検証が行われるかどうか
- キングス以外の利用(コンサート、市民利用)の実績。稼働率が非公開のため、外からは分からない
調べる前と後で、いちばん変わったのはどこですか。
たぶん、コートの上の40分の見え方かなあ。
というと。
あの40分は、162億円の建物と、982社の企業と、県内を回り続けてきた人たちと、その席を毎試合埋めてきた僕らの上に成り立ってた。横浜アリーナで泣いてたときは、そんなこと一つも知らなかったよ。
数字を知って、熱は下がりましたか。
ううん、逆。上がったよ。選手が走って、スタッフが仕込んで、営業が回って、運営が受け取れる公金を受け取らずに回す。そのどれか一つでも欠けたら、あの日はなかったと思うんだ。
最後のは、筆者の見立てですね。
そう、見立て。でも、そう思っていたいな。
9月22日、また画面の前に座ります。
※本記事は2026年8月19日時点の公開情報にもとづきます。クラブの決算数値は2024-25シーズン(2025年6月期)のもので、2025-26シーズン分は本記事の確認範囲では未公表でした。売上構成比・客単価・1社あたり金額・予算比・補助金の合計などは、公表された金額をもとに筆者が計算したもので、リーグやクラブ、行政が公表している指標ではありません。パートナー企業数と地域交流活動回数はクラブの実績報告に基づき、集計の定義はクラブの基準によります。アリーナの財源内訳は債務負担行為調書の限度額ベースであり、総事業費全体の内訳とは範囲が一致しません。補助金の金額は、市の予算書によるものと内閣府の交付決定額によるものを、本文中で出所を分けて記載しています。
出典
- B.LEAGUE:クラブ決算開示(各年度)
- B.LEAGUE:2024-25シーズン クラブ決算開示(PDF)
- B.LEAGUE:新リーグ規程(B.PREMIER参入基準)
- B.LEAGUE:新リーグ クラブ一覧
- B.LEAGUE:2026-27シーズン開幕情報
- B.LEAGUE:新リーグ1次審査結果(2024年10月17日)
- 沖縄バスケットボール株式会社:第18期実績報告
- 沖縄バスケットボール株式会社:第19期実績報告
- 沖縄バスケットボール株式会社:2025-26シーズン実績
- 沖縄バスケットボール株式会社:2026-27シーズン開幕カード
- 沖縄アリーナ株式会社:指定管理に関するリリース
- 沖縄市:沖縄アリーナ竣工(段階別の活用補助金)
- 沖縄市:沖縄サントリーアリーナ(施設概要・命名権)
- 沖縄市:指定管理者制度
- 沖縄市:平成31年度一般会計予算に関する説明書(債務負担行為調書・PDF)
- 沖縄市:令和2年度一般会計予算に関する説明書(PDF)
- 沖縄市:令和3年度一般会計予算に関する説明書(PDF)
- 沖縄市:令和6年度一般会計予算(債務負担行為・PDF)
- 沖縄市:多目的アリーナ運営手法等検討調査業務報告書 第3章(PDF)
- 沖縄市:令和8年度予算の概要(PDF)
- 内閣府:令和元年度 沖縄振興特定事業推進費 交付決定(PDF)
- 内閣府:令和2年度 沖縄振興特定事業推進費 交付決定(PDF)
- 参議院『立法と調査』2020年6月 No.424(PDF)
- 沖縄市:沖縄アリーナ 全体概要(スポーツ庁会議資料として掲載・PDF)
- 沖縄市スポーツコミッション:沖縄市体育館
- 琉球新報:アリーナ契約変更を可決(2020年8月7日)
- 琉球新報:「複合」交付金を検討(2018年11月5日)
- 琉球新報:指定管理料の受け取り辞退(2024年3月6日)



