この記事の登場人物
- デザイン業の倒産が、2026年上半期に40件。14年ぶりの高水準で、要因のひとつが生成AIによる「内製化」です。
- 正直に書きます。これは僕の業界の話で、他人事ではありません。
- そのうえで、発注する側にこそ知っておいてほしいリスクと、確認しておくべき3つのことをまとめました。
先日、こんな調査が公表されました。デザイン業の倒産が、2026年上半期に40件。前年同期比で166.6%増、2012年以来14年ぶりの水準だそうです。要因のひとつとして挙げられていたのが、生成AIの普及で顧客側の内製化が進んだことでした(東京商工リサーチ)。
このニュース、僕は少し複雑な気持ちで読みました。なぜなら、これはまさに僕がいる業界の話だからです。
だから今回は、ニュースをなぞるのではなく、当事者として正直に書きます。そのうえで——発注する側である中小事業者のみなさんにこそ、知っておいてほしいことがあります。
正直に言います。僕もこの業界にいます
AIくん。この記事、読んでてけっこうこたえたよ。倒産した40件のうち、9割が従業員5人未満なんだって。……うち、まさにその規模なんだ。
そうだね。数字としては、そのとおりだよ。従業員5人未満が36件、構成比90.0%。小さな事業者に集中している。
「AIで内製化が進んだ」ってところがね。僕、AIを使って業務改善する仕事もしてるんだ。つまり、自分が広めている道具が、自分の業界の仕事を減らしてるかもしれない。
……その葛藤は、正直に感じていいと思うよ。否定しない。実際、同じ構図はいろんな業界で起きているからね。
……ただ、だからって「AIを使わないでください」とは言えないんだよね。事業者さんにとっては、便利な道具なんだから。
うん。そこは切り分けて考えていいと思うよ。道具が広まること自体は止められないし、止めるべきものでもない。
そうだよね。じゃあ僕にできるのは、隠さずに書くことかな。「Web屋も安泰じゃない」っていう前提を先に出したうえで、発注する側が何に気をつけるべきかを書く。そっちのほうが、読んでる人の役に立つ。
いい考えだと思う。不安をあおるより、そのほうがずっと実になるからね。
発注する側にとって、これは何のリスクか
「制作会社が倒産している」というニュースは、一見すると業界内の話です。でも、サイトを持っている事業者にとっては、けっこう切実な問題を含んでいます。
AIくん、発注する側からすると、これって何が困るんだろう。
いちばん大きいのは、頼んでいた会社が急にいなくなることだね。サイトは公開して終わりじゃない。サーバーやドメインの更新、不具合の修正、セキュリティの更新——止まると困る作業が、毎年ずっと続くんだ。
たしかに。「更新をお願いしてた会社と連絡が取れない」って相談、実際に聞くことがあるよ。
そうなると、次の会社に引き継ぐ作業から始めることになる。でもね、引き継ぎに必要なものが手元にないと、そこで止まってしまうんだ。
……あ。それってつまり、ふだんから手元に置いておけば防げるってこと?
そのとおりだよ。よく気づいたね。倒産のニュースを読んで不安になるより、今すぐ確認できることが3つあるんだ。
いま確認しておきたい3つのこと
制作会社が健全かどうかは、外からは分かりません。でも「もし何かあっても、自分で動ける状態か」は、今日確認できます。
- ドメインとサーバーの契約は、誰の名義か。制作会社の名義になっていると、連絡が取れなくなった時に手が出せません。自社名義で、管理画面のIDとパスワードが手元にあるのが理想です。
- サイトのデータ(バックアップ)を持っているか。制作会社のサーバーにしかない状態は、いちばん危ない形です。
- WordPressなどの管理者アカウントを持っているか。「更新は全部おまかせ」でも、管理者権限は自社で持っておくべきです。
これ、業者側からすると、ちょっと言いにくい話でもあるんだよね。「うちがいなくなっても大丈夫なようにしておいてください」って言ってるようなものだから。
でも、それを先に言える会社のほうが、信頼できると思わない?
……たしかに。囲い込んで縛るんじゃなくて、いつでも他に移れる状態にしたうえで、それでも選んでもらう。そのほうが健全だ。
うん。それに、この3つを確認するのは、今の制作会社を疑うことじゃないよ。災害の備えと同じで、何もなければ使わずに済むというだけの話だからね。
それでも、なくならない仕事はある
AIくん。最後にひとつ聞きたいんだ。AIで内製化できるなら、僕らみたいな仕事はいらなくなるのかな。
減る仕事は、たしかにあると思う。「言われたとおりに作る」だけの作業は、道具が肩代わりしやすいからね。
……うん。それは僕もそう思う。
でもね。「何を作るべきか」を決めることや、「作ったあと、どう回していくか」は、まだ人の仕事だよ。実際、この倒産の要因には「紙媒体からデジタルへの転換に対応できなかった」という話も挙げられていた(東京商工リサーチ)。つまりAIそのものより、変化に合わせて何をするかのほうが分かれ目なんだ。
そうか。道具が変わるのは止められないけど、その道具を持って何をするかは、こっちが決められるんだな。
そう。だからとぐちは、AIを使う側に回ればいい。事業者さんが自分でできるようになる部分は、どんどん渡していけばいいんだよ。それでも残る「決める」「続ける」の部分で、力になればいいんだから。
……よし。ちょっと元気が出た。ありがとう、AIくん。
うん。こういう話も、隠さず書いていこうね。
まとめ
- デザイン業の倒産は2026年上半期で40件、14年ぶりの高水準。9割が従業員5人未満の小さな事業者。
- 発注する側にとってのリスクは「頼んでいた会社が急にいなくなること」。サイトは公開後も作業が続くため、止まると困る。
- 今日できる備えは3つ。ドメイン・サーバーの名義/バックアップの所在/管理者アカウントの確認。
- 今の制作会社を疑う話ではなく、災害の備えと同じ。何もなければ使わずに済む。
自分の業界の話なので、少し書きにくいところもありました。それでも、こうしたことも含めてお伝えできればと思っています。公開したあとも長くお付き合いいただくものだからこそ、備えの話は先にしておきたいのです。
※本記事は2026年8月4日時点の情報です。倒産件数などの数値は東京商工リサーチの公表資料によります。備えの3点については一般的な考え方であり、契約内容によって対応は異なります。具体的なご不安がある場合は、契約書とあわせてご確認ください。



