この記事の登場人物
- 生成AIで作ったLPは、なぜか「それっぽいのに安っぽい」。原因は個々の部品ではなく、装飾の足し算にあります。
- 同じ内容で before / after のページを実際に作りました。切り替えて見比べられます。
- 直し方には順番があります。そして内製化している事業者にとって、いちばん効くのはデザインをいじることではありませんでした。
生成AIにLPを作らせると、10分でそれらしい画面が出てきます。速い。助かる。
でも、できあがったものを見て、こう思ったことはないでしょうか。「それっぽいけど、なんか安っぽい」と。
どこが悪いのか指摘しづらいのが厄介なところです。文字は読める。色もついている。ボタンもある。なのに、自社のブランドとして出すには、何かが足りない。
ブランドLPの改修でこの問題に正面から当たったので、そのとき使った直し方を公開します。実際に before / after のページを作りましたので、まずそちらを見てください。文章より速く伝わると思います。
まず、実物で見てください
上のスイッチで切り替わります。中身の情報量は増やしていません。装飾を引いて、仮の文章を実際のコピーに入れ替えただけです。番号のチップをオンにすると、どこを直したかが分かります。
架空の沖縄の商材(月桃のハンドバーム)を題材にしました。実在の事業者とは関係ありません。
なぜ「AIっぽく」見えるのか
結論から書きます。AIは空間を埋めようとして、意味のない装飾を足します。
円やリング、飾りの英語ラベル、グラデーション、浮いた影、カラフルな配色。ひとつひとつは“それっぽい”のに、集まると「量産型」の匂いになります。

AIっぽさは、素材やセンスの問題である前に「装飾言語」の問題です。だから抜き方も決まっています。足すのではなく、引く。
でもさ、装飾を引いたら、寂しくならない?
そこが分かれ道です。寂しく見えるとしたら、たいてい原因は装飾の不足ではありません。中身がまだ入っていないんです。
中身?
実際のコピーと、実際の写真です。仮の文章のまま整えても、どこか空虚に見える。だから装飾で埋めたくなる。順番が逆なんです。
……それ、デザインの話じゃなくて、こっち側の準備の話だよね。
はい。この記事でいちばんお伝えしたいのは、そこです。
よく出る10のサインと、直し方
「こう見えていたら」→「こう直す」の対で並べます。手元の画面に当てはめてみてください。
- 意味のない幾何装飾。円・リング・斜線・浮遊する図形で余白を“それっぽく”埋める。→ まるごと撤去する。余白そのものをデザインとして残す
- 飾りの英語ラベル。日本語ページに PRODUCT IMAGE、ABOUT、THREE REASONS が散らばる。→ 機能上いる語だけ残し、あとは日本語化か削除
- フォント無頓着。OS標準のまま。なんとなく明朝で“上品ぶる”。→ 目的に合う書体を1〜2種、意図して選ぶ
- グラデーション頼み。背景やボタンをグラデにして“リッチ”に見せようとする。→ 単色ベースに。使う色数そのものを絞る
- レインボー配色。要素ごとにバラバラの色。パステルの虹で統一感がない。→ 基調色1つ+役割のある差し色。本文は無彩色に戻す
- 浮いた影。カードやボタンにドロップシャドウを付けて“浮かせる”。→ 影に頼らず、地色のコントラスト・罫線・余白で立たせる
- ベタ塗りバッジ。角丸のベタ塗りタグをあちこちに置く。→ アウトライン+文字、罫線+文字の軽い意匠に置き換える
- UI部品みたいな作り。区切り線だらけのリスト、色付きの囲みコールアウト。→ 印刷物のような組版へ。注記は「※」で十分
- プレースホルダーのまま。ダミー文言・仮画像のまま“それっぽく”仕上げる。→ 実コピー・実写真を入れる
- 意匠がバラバラ。部品ごとに違う装飾ルールで、全体がちぐはぐ。→ 「罫線+文字」「アクセントバー」など共通の型を全体で使い回す
デモの before には、この10個を意図的に全部入れてあります。並べて見ると、自分の画面のどれが当てはまるか判断しやすくなるはずです。
直す順番がある(上ほど効果が大きい)
やみくもに触ると時間だけ溶けます。上から順に手を入れてください。
- 実素材を入れる。写真・確定コピー・ロゴを先に流し込む
- 足した装飾を引く。幾何装飾・飾り英語・グラデ・浮いた影を撤去する
- 色を整理する。基調色1つ+差し色に絞り、本文は無彩色へ
- 書体を選ぶ。1〜2種。見出しと本文の役割を決める
- 意匠の型を統一する。ラベル・区切り・ボタンの見せ方を一つに揃える
- 動きは最小限だけ。入れても“うっすら1種”まで
内製化しているなら、いちばん効くのはデザイン以外だった
実務でやってみて、いちばん意外だったのがこの点でした。
10のサインのうち、直したときの効き目がいちばん大きかったのは9番の「プレースホルダーのまま」でした。デザインの手数としては、いちばん地味な項目です。
「ここに商品の魅力を伝えるテキストが入ります」を、「本島北部の畑で6月に刈り取った葉を、その日のうちに蒸留しています」に差し替える。それだけで、装飾を1個も触っていないのに画面の説得力が変わります。
逆に言うと、仮の文章のまま装飾だけ整えても、AI感は残ります。むしろ整えるほど「よくできたテンプレート」に近づいていく。
内製化している事業者にとって、これは前向きな話だと思っています。デザインの腕前より先に効くのが、自社にしか書けない具体だからです。
- いつ、どこで、誰が作っているか
- 数字(何グラム、何時間、何回分、何か月もつか)
- 使った人が実際に言った言葉
- できないこと、向いていない人
これはAIには書けません。社内にしかない情報です。ここを埋める作業は、デザイン工程ではなく事業側の仕事で、そのうえAI感を抜く効果がいちばん大きい。
デモの after を見ていただくと、装飾はほとんどありません。使っているのは罫線と余白と、具体的な文章だけです。
AIへの指示は、否定形で書くと効く
実務で分かったことをもうひとつ。生成AIにLPを作らせるとき、「おしゃれに」「モダンに」と頼むと装飾が増えます。AIにとって、それらの語は「足す」指示だからです。
引く指示を、先に渡します。たとえばこういう形です。
装飾は足さないでください。円・リング・斜線などの幾何装飾を置かない。グラデーションを使わない。ドロップシャドウを使わない。飾りの英語ラベルを入れない。色は基調色1色+差し色1色まで。本文は無彩色。区切りは1pxの罫線と余白で表現してください。
禁止事項を具体的に並べるほど、出力は落ち着きます。「センスよく」ではなく「これをしないで」と書く。この方が、AIにも人にも同じ精度で伝わります。
この指示は、そのまま外注時の要件にもなります。言語化しておくと、社内でも社外でも使い回せます。
副産物:レビューが速くなる
10のサインに番号を振っておくと、社内のやりとりが変わります。
「なんかダサい」「もう少しいい感じに」では、直しようがありません。これが「1番と6番が出てるので抜いてください」になると、指示として成立します。
デザインの良し悪しは主観になりがちですが、「装飾が足されているかどうか」は、かなり客観的に数えられます。数えられるものは、共有できます。内製チームでレビューを回すなら、この効果は小さくないと思います。
それでも、AIで作る価値は落ちない
念のため書いておくと、AIを使うなという話ではありません。
骨組みを10分で立ち上げられるのは、やはり大きい。この記事の before も after も、下地はAIに書かせています。人がやったのは、足されたものを引く判断と、実際の中身を入れる作業でした。
作る速さはAIに任せて、引く判断は人が持つ。いまのところ、この分担がいちばん噛み合っています。
まとめ
- AIっぽさの正体は、素材やセンスではなく装飾の足し算
- だから直し方も決まっている。足すのではなく引く
- 効き目の順番は、実素材 → 装飾を引く → 色 → 書体 → 型の統一 → 動き
- 内製化している事業者にいちばん効くのは「自社にしか書けない具体」を入れること。これはデザイン工程ではなく事業側の仕事
- AIへの指示は「おしゃれに」ではなく禁止事項を具体的に並べる
- 10のサインに番号を振ると、レビューが感想から指示に変わる
飾りたくなったら、引けないかを先に考える。原則はこれだけです。
足すのは誰にでもできます。引くには理由がいる。その理由を言葉にしておくと、AIにも、社内の誰かにも、同じ指示が出せるようになります。デザインの話に見えて、中身は共通言語をつくる話でした。
※本記事は2026年8月19日時点の内容です。ここで紹介した10のサインと直す順番は、統計調査ではなく筆者がブランドLPの改修という実案件から抽出したもので、すべての案件に当てはまることを保証するものではありません。デモページの商品・ブランド・価格・成分はすべて架空です。判断の材料としてお使いいただき、最終的な設計は各サイトの目的に合わせてご検討ください。




