この記事の登場人物
- 2026年上半期の倒産は5,335件。4年続けて増えています。
- でも大事なのは件数より「理由」です。人が採れない、後を継ぐ人がいない——この理由での倒産が、過去最多になりました。
- これは、売上を増やせば解決する話ではありません。だからこそ、早めに考えておきたいことがあります。
会社がなくなる理由は、ひとつではありません。
「売れなくなったから」。多くの人はそう思います。実際、それはいちばん多い理由です。
でもいま、それ以外の理由で終わってしまう会社が、これまでになく増えています。今日はその話をします。
数字が出てきますが、できるだけやさしく書きます。難しい言葉には、そのつど説明を添えます。
まず、全体の数字から
AIくん、倒産って今どれくらいあるの?
2026年の上半期——1月から6月までの半年間で、5,335件だよ。前の年の同じ時期より6.6%増えている(帝国データバンク)。
半年で5千件超か……。多いのかな、少ないのかな。
4年続けて増えている、というのが大事なところだね。一度きりではなく、増え続けている。
なるほど、流れとして増えてるんだ。
ここで言葉をひとつ。「倒産」とは、会社が借金や支払いを続けられなくなって、事業をやめることです。似た言葉に「廃業」がありますが、こちらは支払いができるうちに自分の判断でやめること。今回の数字は「倒産」のほうです。
どんな会社が、なくなっているのか
大きい会社が倒れてるの?それとも小さいところ?
そこがはっきりしているんだ。負債が5,000万円未満の会社が、全体の62.2%。資本金1,000万円未満の会社が72.6%を占めている。
……ええと、それってつまり?
かんたんに言うとね、倒産している会社の7割以上が、小さな会社ということだよ。
そうか。ニュースになるのは大きい会社だけど、実際に多いのは……。
名前の知られていない、まちの小さな会社なんだ。ニュースにならないだけでね。
言葉の説明です。「負債」は、返さなければいけないお金のこと。借入金や、まだ払っていない仕入れ代金などです。「資本金」は、会社をつくるときや増やすときに用意したお金で、会社の規模を示すめやすとして使われます。
ここからが本題——理由が変わってきた
件数よりも、僕が気になったのは理由のほうでした。
倒産の理由って、やっぱり「売れない」が多いの?
そうだね。販売不振が4,278件で、全体の80.2%。これは変わらず最も多い理由だよ。
8割か。まあ、そうだよね。
……でもね、とぐち。ここ数年で、はっきり増えている理由が3つあるんだ。しかも、どれも過去最多を更新している。
え、3つとも?
うん。順に言うね。
- 物価高倒産:556件(過去最多を大幅に更新)
- 後継者難倒産:312件(過去最多)
- 人手不足倒産:227件(過去最多)
それぞれ、かんたんに説明します。
物価高倒産とは、仕入れ値や光熱費が上がったのに、売る値段を十分に上げられず、利益が出なくなって終わってしまうことです。
後継者難倒産とは、経営者が高齢になったり体調を崩したりしたときに、あとを継ぐ人がいないために続けられなくなることです。
人手不足倒産とは、働く人を集められず、仕事があるのに回せなくなって終わってしまうことです。
……AIくん。これ、よく見ると変じゃない?
どうしたの。
後継者難と人手不足って、売れてないから潰れるわけじゃないよね。仕事はあるのに、人がいないから続けられないってことでしょ。
……そこに気づいたのは、大きいことだと思うよ。
つまり「がんばって売上を伸ばせば助かる」という話ではないってことか。
そのとおりなんだ。むしろ売上が伸びるほど、人が足りなくて苦しくなることさえある。
……それはきついな。
どんな業種で起きているか
業種別に見ると、こうなっています。
- サービス業:1,418件(最多。過去最高)
- 小売業:1,108件(3年続けて1,000件超)
- 建設業:1,043件(13年ぶりに1,000件超)
建設業が13年ぶりって、けっこうすごい数字だね。
そうだね。建設は職人さんの高齢化が進んでいる分野だから、人手不足や後継者難と重なりやすい。
サービス業が最多なのは?
飲食や宿泊、生活に関わるサービスが含まれるからね。人の手がどうしても必要な仕事が多いんだ。
あ……人の手が要る仕事ほど、人が採れないと詰まるのか。
話がつながってきたね。
これから、もう少し厳しくなるかもしれない
この先はどうなりそうなの?
調査では「年の後半も倒産が増えるおそれがある」とされているよ。理由のひとつが金利の上昇だね。
金利って、借りたお金につく利息のことだよね。
そう。日本銀行が金利を上げていて、そうすると会社が銀行から借りているお金の利息も上がるんだ。調査では「借金が多くて、あまり儲かっていない中小企業は、お金のやりくりが厳しくなる」と指摘されている。
同じ金額を借りていても、返す負担が増えるってことか。
そういうことだね。
では、どうすればいいのか
数字を並べて終わりでは、意味がありません。ここからは、僕なりに考えたことです。
1. 「売上を増やす」以外の答えを持っておく
売上が減ったなら、増やす努力をします。それは正しい。でも人が足りない、後を継ぐ人がいないという問題は、売上を増やしても解決しません。むしろ忙しくなって悪化します。
問題によって、効く手当ては違う。まずそこを分けて考える必要があります。
2. 「ひとりが辞めたら回らない仕事」を減らしておく
人手不足の会社ほど、特定の人しかできない仕事を抱えています。その人が辞めたら、そこで止まる。
だから、少しずつでも手順を書き出す、誰でもできる形にする、自動でできる部分は任せる。これは業務改善の話に聞こえますが、会社を続けるための備えでもあります。
3. 後継ぎの話は、元気なうちにする
後継者難倒産が過去最多という数字は、「まだ先でいい」と思っているうちに時間が来てしまった会社が多いことを示しています。
体調を崩してからでは、選べる道が減ります。今すぐ決めなくても、話し始めておくことはできます。
3つめは、正直いちばん言いにくいことだよね。
そうだね。でもいちばん時間がかかることでもある。人を育てるにも、引き継ぐにも、何年もかかるからね。
時間がかかることほど、早く始めないといけないのか。
うん。そして早く始めた人だけが、選べるんだ。
まとめ
- 2026年上半期の倒産は5,335件で、4年続けて増加。
- 倒産した会社の7割以上が小さな会社(資本金1,000万円未満が72.6%)。
- 最も多い理由は販売不振(80.2%)。ただし——
- 物価高(556件)・後継者難(312件)・人手不足(227件)による倒産が、そろって過去最多。
- 後継者難と人手不足は、売上を増やしても解決しない。別の備えが要る。
「うちは売れているから大丈夫」。そう思える会社ほど、人の問題は後回しになりがちです。
でも数字が示しているのは、売れていても続けられなくなる会社があるということでした。
明日からできることは、そんなに多くありません。ひとつだけ選ぶなら——「この人が辞めたら困る」という仕事を、ひとつ書き出してみる。それだけでも、備えの始まりになると思います。
※本記事は2026年8月14日時点の情報です。倒産件数は2026年上半期(1月〜6月)の集計値であり、直近の状況を示すものではありません。統計の定義や集計方法は調査機関により異なります。金利や資金繰りの影響は各社の状況によって大きく異なりますので、具体的なご判断は取引金融機関や専門家にご相談ください。



